法定労働時間といえば、1日8時間、1週40時間が限度です。
しかし、この1年単位の変形労働時間制では、その規定を超えて労働させることができます。
業務の繁閑のある事業場において、繁忙期に長く、閑散期に短く労働時間を設定することで、効率的に労働時間を配分することで、年間の総労働時間を削減する目的があります。
しかし厳格なルールがあります。
①労使協定締結し届け出ること
1年単位の変形労働時間制を実施するには労使協定で次の5項目について協定を締結する必要があります
〇対象労働者の範囲
〇対象期間(1カ月を超え1年以内の期間)、起算日
〇特定期間(対象期間のうち特に業務が繁忙な期間のこと)
〇労働日及び労働日ごとの労働時間
〇労使協定の有効期間
②労働日数の限度
上記対象期間における労働日数の限度は原則1年間に280日となります。
③連続労働日数
対象期間における連続労働日数は最長6日です。
ただし、労使協定において特定期間を定めることで特定期間においては最長12日とすることができます。
④労働時間の限度
1日10時間、1週52時間を超える協定を定めることはできません。
※対象期間が3カ月を超える場合
対象期間中に連続48時間を超える労働時間の設定は連続3週まで
対象期間を初日から3カ月ごとに区切った各期間において、週48時間を超える週の初日が3以内
注意点
①労使協定で定めた労働日、労働時間は任意には変更できません
②年少者は原則適用できない、妊産婦も請求がある場合は適用できないこと
③割増賃金の計算が煩雑になること
労使協定で1日8時間1週40時間を超える時間を定めた日、週とそれ以外の日、週で
時間外労働となる時間が変わってきます。
④育児を行う者、介護等を行う者へ配慮しなければならないこと
⑤就業規則を整備すること
始業、終業の時刻や休憩時間、休日は就業規則の絶対記載事項です。
労使協定により1年単位の変形労働時間制を採用することにした場合でも、変形期間中の事項について就業規則に定め、届け出ることが必要となります。
※労働日の特定について
前述の通り、労使協定で定めた労働日、労働時間は任意変更することはできません。
しかし、数カ月先まで定めることは難しいかもしれませんので、以下の措置が可能です。
対象期間を1カ月以上の期間ごとに区分して、最初の区分については定めるが、その後の区分期間については、労働日数と総労働時間だけを定めておいて、その月の初日の30日前までに従業員代表の同意のもと定めるということができます。
厳格なルールのもとに運用されることが求められますので、そのルールから逸脱した場合は、所定内労働のつもりが時間外労働とみなされ、思わぬ未払い残業代が発生することもあります。
また、時間外労働や勤怠の集計などが煩雑になることが考えられますので、導入する際には、勤怠管理システムなどの導入もともに検討することをお勧めします。
御社に本当に必要な制度なのか吟味したうえでのご検討ください。
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