就業規則の内容

就業規則といえば、常時10人以上の労働者を使用する使用者において、作成と届出が義務となっています。

しかし、それ以下の規模の事業場においても届出は義務ではないものの、作成しておくことがおすすめです。

就業規則によって、労使双方が守るべきルールを定めておくことで、無用なトラブルを避けることができるといわれているからです。

それでは、就業規則には何が書かれているのでしょうか。

厚生労働省のモデル就業規則の内容をまとめてみました。

第1章 総則

第1条 目的

    労働者の就業に関して定めたものであることが書かれています。

第2条 適用範囲

    この就業規則がどの範囲の労働者に適用されるのか記載します。

    パートタイム労働者などについては、別の就業規則を定めることもできます。

第3条 規則の遵守

    会社も、労働者もこの就業規則を遵守し誠実に履行すべきことが記載されています。


第2章 採用、異動等

第4条 採用手続

    男女関わりなく、また間接差別等せずに均等な機会によって選考し採用することとされています。

第5条 採用時の提出書類

    労働者の本人確認や資格所持の証明のために書類を提出させることができますが、

    その目的を労働者に明らかにする必要があります。

第6条 試用期間

    試用期間を設けることあるいは設けないことを記載しています。

    また試用期間に不適格と判断し解雇する場合の手続きに関しても記載します。

第7条 労働条件の明示

    労働者を雇い入れる際には、原則書面によって労働条件を明示が義務であり、

    その明示する内容について規定しています。

第8条 人事異動

    人事異動については一定の場合は会社の裁量ですが、労働者の意に沿わない変更等を命じるとトラブルに

    なりえますので、ここで規定しておきます。

第9条 休職

    労働基準法においては定めはありませんが、規定しておくことで安心して働くことができます。


第3章 服務規程

第10条 服務

    労働者に職務上の責任により誠実に職務を遂行するように規定します。

第11条 遵守事項

    職場の秩序維持のために遵守させたいことを記載します。

第12条 職場のパワハラ禁止

    職場におけるパワハラを防止するために、事業主には雇用管理上必要な措置をとることが求められていま

    す。

第13条 セクハラの禁止

    セクハラもパワハラ同様です。

第14条 妊娠・出産・育児休業・介護休業等へのハラスメントの禁止

    第12条と同様です。

第15条 その他あらゆるハラスメントの禁止

    第12条と同様です。

第16条 個人情報保護

    個人情報保護法により、使用者に個人情報の適正な管理に関する対策が求められていますので、労働者が個

    人情報を扱う際のことについて規定します。

第17条 始業及び終業時刻の記録

    使用者には労働時間を適正に把握することが求められていますので、適正に把握できるよう、打刻を指示し

    ています。

第18条 遅刻、早退、欠勤等

    会社秩序の維持のために、遅刻、早退、欠勤の際の手続きについて定めておくとよいです。また、欠勤が続

    く場合は診断書を提出させる等定めることもできます。


第4章 労働時間、休憩及び休日

ここは絶対的必要記載事項となります。

第19条 労働時間及び休憩時間

    ここで定めることにより所定労働時間が決まってきます。

    勤務形態により始業・終業時刻が異なる場合はそれも規定します。

    また変形労働時間制等採用している場合はここにも規定が必要です。

第20条 休日

    労働基準法では、何曜日を休日にするかを規定していません。

    勤務の実態に合わせて、定めることが必要です。

    また、第19条と同様に、変形労働時間制等を採用している場合はここでも規定が必要です。

第21条 時間外及び休日労働

    時間外労働、休日労働がある場合は、36協定の締結、届出により、当該協定の範囲で行わせることを規定し

    ます。

第22条 勤務間インターバル

    勤務間インターバルを導入する場合はここにインターバルとなる休息時間、休息時間の確保のための

    始業を遅らせる措置などを規定しておきます。


第5章 休暇等

第23条 年次有給休暇

    法定通りの付与となるのか、あるいは入社日に付与されるのか等規定します。

    また、使用者による年5日分の時季指定についても規定します。

第24条 年次有給休暇の時間単位での付与

    労使協定により年5日限度で、時間単位で有給休暇を付与することができますので、実施する場合は規定し

    ます。

第25条 産前産後の休業

    法定通りに休業させることを規定しておきます。

第26条 母性健康管理の措置

    母子保健法により、事業主は、同法が定める保険指導又は検診を受けるために必要な時間を確保できるよう

    にしなければなりませんので、その際の手続き等について規定します。

第27条 育児時間及び生理休暇

    育児時間については、労働基準法により規定の時間があります。

    一方、生理休暇については、請求のあった期間就業させてはいけないと規定されていますが、休暇の付与

    については、暦日、半日、時間単位と事業者の裁量となります。

第28条 育児・介護休業、子の看護休暇等

    育児・介護休業法に基づく休業、所定外労働や深夜業の制限、所定労働時間の短縮措置等について規定し

    ます。

    また、育児・介護休業等の取扱いについては別で定めることができますが、その場合はその規程も就業規

    則とみなされますので、就業規則同様届出が必要です。

第29条 不妊治療休暇

    労働関係法令上必ず定めるものではありませんが、近年ニーズが高まっていることもありますので社内の

    状況を踏まえて規定しましょう。

第30条 慶弔休暇

    労働基準法上義務ではありませんが、定めておくと安心して働けます。

第31条 病気休暇

    第30条と同様です。

第32条 裁判員等ための休暇

    裁判員制度おける裁判員等になりその職務を行うことは、労働基準法上の公民権行使の保障に該当します

    ので、その際に取得する休暇について定めておく必要があります。


第6章 賃金

賃金に関する事項は、別途賃金規程として定めることもできます。その場合は別途届出が必要となります。

また、絶対的記載事項です。

第33条 賃金の構成

    以下の条文で規定する賃金の全体像を規定しておきます。

第34条 基本給

    基本給は各事業場において、公正に決めることが大事です。

    また、月給制、日給制、日給月給制、時間給等もここで定めておきます。

第35条 家族手当

第36条 通勤手当

第37条 役付手当

第38条 技能・資格手当

第39条 精勤手当

    第35条~第39条に掲げた諸手当については、設けるかどうかや、金額等は各事業場に任させています。

第40条 割増賃金

    法定通り支払うことを規定します。

    また、割増賃金の計算の基礎に含まれるのかどうかはその実態により判断されますので、前条において

    しっかり規定しておくことが求められます。

第41条 1年単位の変形労働時間制に関する賃金の計算

    1年単位の変形労働時間制においては、対象期間の途中での入社や退社の労働者等については割増賃金の

    精算が必要になります。

第42条 代替休暇

    1か月に60時間を超える時間外労働に対し、労使協定により、割増賃金率引き上げ分に代えて、有給の

    休暇を付与できる制度があります。制度を設ける場合は規定しておくことが必要です。

第43条 休暇等の賃金

    有給休暇についてはその支払う賃金については労働基準法により3種類あります。

    どれを採用するのを規定しておく必要があります。

    また、その他の休暇については有給、無給や支払い割合については労働基準法に定められていませんので

    各事業場の裁量により規定します。

第44条 臨時休業の賃金

    使用者の責に帰すべき事由により所定労働日に労働者を休業させる場合には、平均賃金の60%以上を支払

    わなければなりませんので、規定しておきます。

第45条 欠勤等の扱い

    労働者が欠勤、遅刻、早退した結果労働しなかった時間、日については、ノーワークノーペイの原則により

    支払う必要はありません。しかし支払う場合もその旨を記載しておくとよいです。

第46条 賃金の計算期間及び支払日

    賃金は毎月1回以上一定の支払日を定めて支払うことが必要ですので、規定します。

第47条 賃金の支払と控除

    賃金は通貨で直接労働者に全額支払わなければなりません。(所得税、住民税、社会保険料等は控除できま

    す。)また、労使協定により社宅費用や福利厚生施設費用等も控除できます。

    労働者の同意により銀行振り込みにより支払えることも規定しておきます。

第48条 賃金の非常時払い

    労働基準法に規定されていますので、そのまま規定します。

第49条 昇給

    昇給の条件や昇給期間等について公正な基準を定めておきます。

第50条 賞与

    賞与は労働基準法上定めはありませんが、支給する場合はその対象時期、算定基準、査定期間、支払い方

    法等明確に規定しておきます。

    また、支給対象者を一定の日に在籍する者に限定することもできます。


第7章 定年、退職及び解雇

ここは、絶対的記載事項となります。

第51条 定年 

    定年を定める場合は60歳を下回ることはできません。65歳以下に定めた場合は、高年齢者雇用確保措置が義

    務付けられていますので、その措置も規定します。

第52条 退職

    期間の定めのない雇用の場合、労働者はいつでも退職を申し出ることができます。

    また、労働者から、求められた事項について証明書を交付する義務がありますので、規定しておきます。

第53条 解雇

    労働契約法において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合

    には、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とされています。これらの法律に抵触しないように

    解雇する場合の事由を定めます。


第8章 退職金

第54条 退職金の支給

第55条 退職金の額

第56条 退職金の支払方法及び支払時期

    退職金制度を設けた場合には、適用される労働者の範囲、支給要件、計算・支払の方法、支払い時期など規

    定しなければなりません。また不支給事由等設ける場合も同様です。


第9章 無期労働契約への転換

    有期労働契約で働く従業員に適用される就業規則を別途作成することもできます。

第57条 無期労働契約への転換 

    無期労働契約への申し込みの手続きを規定しておくことで争いを防ぎます。


第10章 安全衛生及び災害補償

ここは、相対的記載事項となりますので、規定がある場合は必ず記載します。

第58条 遵守事項

    安全衛生法に基づき、事業場においては労働災害の防止と快適な職場環境の形成が求められています。

    安全衛生管理体制を確立するための、労働者の行動手順やルールについて規定します。

    また、安全衛生法上選任が義務付けられている各種管理者の業務についても規定します。

第59条 健康診断

    労働安全衛生規則により健康診断の実施が義務となっています。

    その結果を受けて、就業禁止や配置転換が行われることも規定しておきます。

第60条 長時間労働者に対する面接指導

    事業者が、面接指導を実施するために、労働時間を把握すること、また、労働者の申し出により面接指導に

    準じる措置をとることも規定しておきます。

第61条 ストレスチェック

    安全衛生法により、事業者は年1回のストレスチェックが義務付けられています。

    その結果を受けて面接指導を行うこと、また面接指導の結果により、配置転換や労働時間の短縮等の措置を

    行うことを規程しておきます。

第62条 労働者の心身の状態に関する情報の適正な取り扱い

    事業者は労働者の健康の確保に必要な範囲で、心身の状態に関する情報を収集し、使用しなければなりませ

    ん。

    その情報を適正に取り扱う措置を規定しておきます。

第63条 安全衛生教育

    安全衛生法等により、雇入れや配置転換の際に安全衛生教育を行うことを規定しておきます。

第64条 災害補償

    労働災害の場合には、労災保険制度により災害補償を行うこと、業務災害の場合の休業においては、最初の

    3日間は労働基準法により平均賃金の60%以上の休業補償を行うことを規定します。


第11章 職業訓練

    相対的記載事項になります。

第65条 教育訓練

    業務に必要な教育訓練を行うこと、労働者は特段の理由がない限りその教育訓練を受けることを規定します


第12章 表彰及び制裁

    相対的記載事項となります。

第66条 表彰

    表彰は、労働者の士気を高め、業績や生産性の向上につながります。

    公正な基準を定めておきましょう。

第67条 懲戒の種類

    懲戒処分の種類は法によって制限はありませんので、公序良俗に反しない範囲で規定することができます。

    ただし、減給については労働基準法で定める範囲を超えてはいけません。

第68条 懲戒の事由

    懲戒処分の事由についても、法的な制限はありませんが、懲戒権の濫用とみなされることがないように、

    社会通念上相当な範囲で規定しておきます。


第13章 公益通報者保護

第69条 公益通報者の保護

    労働者が、事業者の法令違反行為を通報した場合に、不利益な取り扱いをされることから保護し、事業者の

    コンプライアンス経営を強化するために公益通報者保護法が定められており、それについて規定します。


第14章 副業・兼業

第70条 副業・兼業

    近年、副業や兼業へのニーズが高まりつつあります。しかし、導入の際には、事業場の実態や労使間の十

    分な検討により行ってください。

    秘密漏洩、競合関係、労務提供への支障等の懸念がありますので、ご留意ください。 

    また、副業での労働時間も、労働時間の通算等により時間外労働の取扱いに影響しますので、副業等の場

    合は、十分な確認が必要となります。

                                       以上

柿﨑社労士事務所

青森市の社会保険労務士事務所です 労務相談から各種社会保険手続き、働き方改革まで

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